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STAGEON式“一流”のマーケティング思考術実践編│バズる動画の作り方「完全版」

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運営企画室 チーフ

名和田 翔

YouTube運営事業部 運営企画室 チーフ。フリーランスの動画編集者を経て、2022 年 7 月に STAGEON にジョイン。鋭い洞察力を武器にYouTubeチャンネル立ち上げやコンセプト設計を担当し、登録者数 10 万人を突破するチャンネルを複数生み出している。

専門性を網羅した長尺動画がバズる理由
5つの実例から成功要因を探る

長尺の完全版動画は中長期的に伸びが期待できる

「完全版」といわれる動画がバズっているのを見たことがありませんか。動画一本が長く視聴に時間がかかる場合、動画を見ること自体敬遠されやすいイメージがありますが、実は「完全版」は中長期的に総再生数の伸びが期待できて、なおかつYouTubeチャンネルの認知拡大やチャンネルパワーの強化につながります。

完全版とは、そのチャンネルや演者を象徴するような、情報を網羅している動画のことです。多くの情報を伝えるために長尺であることが多く、「特定のテーマに関して1本の動画を見れば、どんな悩みでも解決できる動画」が完全版の定義といえます。

家づくりを例に挙げると、家を建てる前に知っておきたいこと、建てた後にやるべきこと、売却時により高く売れるよう資産価値を保つ方法など、家を建ててから売るまで、すべてのプロセスで「家で後悔しないコツ」を把握できる動画が『家づくりの完全版』です。

「これさえ見ればすべてわかる!」と謳ったサムネイルや動画は特別感とお得感を打ち出せるので、新規の視聴者を獲得する手段として非常に有効です。

完全版の総再生数が中長期的に伸びていくことを期待できる理由は2つあります。

1つ目の理由は、YouTube市場において、専門性が高い動画を求める方が増えている傾向があることです。完全版は「濃い情報を知りたい」という視聴者ニーズにマッチしているため、多くの人に見られやすくなります。

2つ目の理由は、情報量の多い長尺の完全版は「1回見て終わり」になりづらいことです。最後まで見たけれど、もう一度見返したい。あるいは、「1週間かけてゆっくり見よう」と考えて、チャンネル登録する方も一定数います。YouTubeのアルゴリズムでは、何度も同じ動画を見る人が多いとチャンネルパワーが強くなりやすく、おすすめ動画に表示されやすい傾向があります。

おすすめ動画に表示されることで、そのテーマに関して関心を持つ新たな視聴者に届きやすくなり、また動画が繰り返し見られるようになって、YouTubeチャンネル全体の総再生時間が増え、チャンネルが成長していくわけです。

チャンネル開設後、早い段階で完全版を作っておくと、この完全版をYouTubeチャンネルのホームに設定して他の動画から誘導することができます。こういった導線の工夫によって完全版動画の評価が高くなり、よりおすすめに表示されやすくなるという好循環を生み出せるのも完全版を作るメリットです。

では、ここからはSTAGEONが支援し、再生回数を伸ばした完全版の事例を紹介していきます。5つの事例を取り上げ、バズった理由と工夫したポイントを解説します。

① 超長尺の完全版が1年かけて約50万回再生された事例

人生で一番高価な買い物と言われる注文住宅。多くの人にとって家を建てるのは一生に一度の機会なので、後悔しないよう、しっかり調べたいと思うものです。そんな方々に向けて、注文住宅を建てるときの手順を1から10まで解説する完全版を出したところ、1時間50分という超長尺の動画にも関わらず、約50万回も視聴されました。

とはいえ、この動画は最初からバズったわけではありません。公開後1~2か月の時点では、1~2万回再生程度でした。通常の動画はそこで再生数が頭打ちとなり、それ以上の伸びは期待できないのですが、この完全版は公開から1年かけて、49万回再生まで伸びていきました。

この動画が伸びた要因は、完全版をチャンネルのホームに設定して、他の動画で紹介したり、概要欄に「完全版はこちら」とリンクを貼ったりして、視聴者を誘導する導線を確保したことです。「もっと知りたい」「イチから学びたい」と思った方がリンクをクリックして視聴してくれるので、完全版の再生回数がどんどん増え、そのおかげでチャンネルパワーも強くなっていったと考えられます。

動画制作にあたり工夫したのは、情報の整理です。この動画を撮影するのには、実は5~6時間かかっており、伝える情報量が多かったのですが、完全版の構成と演者の話すニュアンスを考えながら、情報を整理して編集するところに注力しました。

② 初期に完全版を公開し、チャンネルパワーが底上げされた事例

ある不動産投資系チャンネルで、チャンネル開設から3本目の動画として不動産投資の完全版を公開したところ、1週間で1万回再生されました。この完全版がおすすめ動画に表示されたことでチャンネルパワーが底上げされ、他の動画も見てもらえるようになりました。

これは完全版が名刺代わりになり、宣伝効果を発揮した事例です。1つの動画からチャンネル登録してくれる人の人数は平均して50~60、100いけば良いほうと言われる中、この完全版は、1か月で1200人ほど登録者を獲得することに成功しています。チャンネル開設して間もない初期に完全版を作るのは大変なのですが、チャンネル運営戦略としては上策といえるでしょう。

早い段階で完全版を出すと、動画のどこで反応が取れるのかがわかるメリットもあります。動画の再生位置の上にあるグラフを見ると、多くの反応が取れた部分の波が高くなっていることがわかります。この部分で話していたことは、視聴者が求めている内容だと考えられるので、それをネタにして通常動画を出すとバズりやすいです。

この動画で工夫したのは、不動産投資の闇を煽るような訴求をしたことです。YouTube市場を見ると、不動産投資に対して「怪しい」「騙されそう」と感じている視聴者は少なくありません。そんな視聴者の深層心理に応えるために、「不動産投資で騙されないための方法をすべて話します!」という切り口にしたら、より視聴者に興味のある内容になるのでは、と仮説を立てました。

完全版は作るのに時間がかかるため、この仮説が当たらないと労力が無駄になってしまいます。しかし、今回の事例では、演者から「実際に不動産投資で騙されて、莫大なお金を失って後悔している人はかなり多い」と事前に聞いていたので、不動産投資で損したくない、騙されたくないという視聴者の強いニーズがあることはわかっていました。

さらに、演者が不動産投資において豊富な実績を持っていて、そういった視聴者のニーズを満たす内容を盛り込むことができるので、仮説は高確率で当たるだろうと判断できました。完全版を作るときは、サービスや商品をつかうお客様のニーズをしっかり理解していることが成功のカギとなります。

③小さな市場でも、完全版が有効であることを示した事例

次の事例は、太陽光発電を扱うチャンネルです。太陽光発電はそもそも市場が小さく、成功している競合チャンネルを見ても、チャンネル登録者は1万人程度です。

太陽光発電について知りたい視聴者は1万人程度という前提のもと、「これを見れば太陽光発電のすべてを学べる」という60分の完全版を作って公開したところ、当初の再生回数は5000回と平均的でした。やはり太陽光発電は厳しい市場かと思ったのですが、公開から10か月経った現在、再生回数は限界値を超えて約3万回まで伸びています。

これは完全版が小さな市場でも有効であるとわかる好例です。ニッチなジャンルでも情報を求めている人はいて、かつ発信しているチャンネルが少ないため、完全版で専門性を網羅して訴求できれば「こういうのを待っていた」と思ってもらえます。より多くの人に動画を届けることができた結果、限界値を超えた約3万回再生につながったのではないでしょうか。

この完全版を作るにあたって意識したのは「完全版とはいえ、ターゲットは絞ること」です。網羅性が大事ではあるのですが、太陽光発電に関するトピックをもれなくすべて詰め込むのがよいわけではありません。

私たちは太陽光発電について知りたい人が2種類いると仮説を立てました。まず、注文住宅を買いたい人や、太陽光パネルの設置を検討している人たち。そして、太陽光発電のセールス業者や、環境・政治的な側面から太陽光発電に興味を持つ人たちです。

このチャンネルで狙いたいのは前者、すなわち太陽光発電を導入したい層ですから、そこに刺さる網羅的な情報を取捨選択する必要があります。後者の人たちが知りたい情報があったとしても、前者にとってノイズになるのであればカットすべきです。

ターゲットを定義づけし、そのターゲットが求めている内容に合わせて表現を変えるのにはコツが要りますが、多くのチャンネル支援をしてきたSTAGEONは、必要な情報と不要な情報の見極めや、表現のコントロールといったサポートを得意としています。

④情報量で差別化を図り、再生回数を伸ばした事例

次に紹介するのは、公認会計士が経営者層に向けてお金まわりを解説するチャンネルです。安定経営のためのノウハウそのものはシンプルなので、企画が似通ってマンネリ化しやすいのがチャンネルの課題でした。

その課題を解決すべく、会社のお金に関する情報を網羅した40分の完全版を出したところ、その動画の再生回数は約8万回まで伸びました。企画の幅を出しにくいジャンルでマンネリ化してきたら、既出の情報をアップグレードし、トレンドの情報も網羅して長尺動画として公開すると、新規ユーザー獲得のきっかけになります。

ビジネス系は、企画の内容だけで競合と違いを出すのが難しいジャンルです。そんな中、何度も見られる長尺の完全版に注力すると、視聴者から「こんなに詳しく話してくれるんだ。チャンネル登録してまた見にこよう」と思ってもらいやすく、チャンネルパワーも高めていくことができます。

似たような動画がすでに公開されている状態で、新たに長尺の動画を作ろうとすると、構成に悩むかもしれません。そんなときは、既存動画のコメント欄を見て、「ここをもう少し知りたかった」という要望をピックアップして、総編集のように答えるのがおすすめです。

視聴者の求めている情報を、どんどん完全版という箱の中に詰め込んでいくイメージですね。一人ひとり好みが違っていても、いろいろな味が入ったドーナツのバラエティパックを用意しておけば満足してもらえるのと同じように、完全版だからこそ広い層のニーズに応えることができるのです。

⑤サムネイルと冒頭で再現性の高さを伝え、110万回再生された事例

最後に紹介するのは、完全版の見本ともいえるビジネス系の動画です。経営者向けに事業構築のノウハウを網羅したその動画は、公開から1年で110万回再生を記録しました。チャンネルの登録者は約15万人なので、登録者数の7倍以上再生された、大ヒット動画ということになります。

ビジネス系の動画では「完全解説」「完全攻略」という表現を盛り込んだサムネイルが流行っていますので、以前は目新しかった表現も、使う人が増えたことで新鮮味を失ってきている印象です。

しかし、この大ヒットした動画のサムネイルには「完全解説」や「完全攻略」の単語はつかわれていません。かわりに演者のメッセージがストレートに伝わる、「○○をやれ」というセリフ調のコピーを入れました。

それに加えて、演者の実績を端的に表す単語を盛り込み、「無料からでも成功できる」というニュアンスの一言を添えることで、視聴者の信頼と期待をサムネイルだけで醸成することに成功しています。「この動画で紹介されているノウハウは、自分でもできるんじゃないか」と思ってもらえるからこそ、多くの人がこの動画を見てくれたのでしょう。

再現性が高いと思ってもらうことの重要性は、サムネイルに限った話ではありません。演者の実績や経験が体系化され、網羅的に1本の動画にまとまっているからこそ、視聴者は「これを見て自分も同じようにやればいい(そうすれば成功できる)」と思ってもらえるのです。

この動画の成功要因をまとめると、サムネイルの文言で動画を見始めるハードルを下げ、「億を超える年商なんて無理でしょ」という視聴者の深層心理を覆す情報を盛り込んだことが、完全版の情報にさらなる価値を与えたのです。

完全版に大切なのは、根幹にあるものに向き合うこと

ここまで成功した完全版の事例を5つ紹介しましたが、これから完全版を作るのであれば、チャンネルを通して伝えたいメッセージの芯にある「大義名分」を、解像度高くイメージすることが何より大切です。

自分はなぜこのチャンネルを成長させていきたいのか、動画を通じて視聴者にどうなってほしいのか。行動のよりどころとなる道理に真剣に向き合うことで、根幹的な部分から枝葉を伸ばし、網羅的に情報をまとめていくことができます。

網羅的に必要な情報をすべて入れる、しかしノイズとなる余計な情報を入れないとなると、さじ加減に悩むこともあるかもしれません。また、チャンネル開設初期に完全版を出すのはとても効果的ですが、知見がない状態で仮説を立てるのは難しいです。

自分だけで作るのは大変と感じているなら、長尺動画の制作実績が豊富なSTAGEONをうまく活用していただければと思います。本コラムで紹介した事例を踏まえ、チャンネルを成長させる完全版を生み出しましょう。

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