1. TOP
  2. COLUMN

【前編】クライアントを“輝かせる”掛け合いとは?——「脱・税理士スガワラくん」の相棒、ミシロくんに学ぶ、掛け合い論

の写真

「脱・税理士スガワラくん」掛け合い役

ミシロ

YouTubeで登録者数130万人を誇る「脱・税理士スガワラくん」。
そのチャンネルで、演者・菅原さんの“相棒”として絶妙な掛け合いを見せているのがミシロくんです。今回のインタビューでは、彼が動画の中でどのように掛け合いを生み出しているのか、その工夫と心がけについて伺いました。動画でも顔出しはしておりませんので、今回ミシロくんはシルエットでの出演となりますが、記事中に登場するテクニックは、実はどれも特別なことではありません。
誰でもすぐに取り入れられる、小さくて確かな工夫が詰まっています。

この記事は前後編の2本立てです!まずは前編からお楽しみください。
後編はこちら

その人を知ろうとすることが、掛け合いの始まりになる

菅原さんとの掛け合いは、最初からあのテンポ感だったんですか?

ミシロ
いや、最初はそんなにうまくできてなかったですね。僕が慣れてないこともあったり、関係性がまだできてなかったんで。お互い探り探りというか。いきなりテンポよく話すのは難しかったです。

関係性は、掛け合いに影響しますか?

ミシロ
そうですね。どんなテンポで話すのか、とかどんな事に興味があるのか、とか、相手に対する理解が深まっていないと、自然な掛け合いにはならないです。だからといって、無理に仲良くなろうとしてたわけでもないんですけどね。

話しやすくするために、何か工夫はされたんでしょうか?

ミシロ
相手がリラックスした状態で話せるように、意識してやってることはあります。

たとえば、どんなことを?

ミシロ
担当するクライアントのSNSは、事前に全部見るようにしてます。どういう投稿をしてるか、何に興味があるのかを把握しておいて、撮影前の雑談のネタにするんです。菅原さんの場合は、よくコーヒーショップの写真を投稿してたので、撮影の時にコーヒーを買って行ったこともあります。

気遣いの鬼じゃないですか……!

ミシロ
いやいや(笑)気を遣ってるというより、「この人は何が好きなんだろう?」って知っておいたほうが、僕自身も構えずに話せるってだけです。雑談もそうですけど、「どこ行ってたんですか?」とか、「あれ、好きなんですか?」みたいな軽い会話を、撮影の合間にちょこちょこ入れるようにしてます。1本撮って、雑談。で、また1本撮って、みたいな感じで。

それって、やっぱり掛け合いにも影響してくるんでしょうか?。

ミシロ
かなりありますね。やっぱり、相手がリラックスした状態だと、こちらもラフに返せる。最初のころは関係性もできていなかったし、「ここって突っ込んでいいのかな?」というNGゾーンがどこか分からなくて、あまり踏み込めなかったんです。でも、ある程度相手のことが分かってくると、距離感もつかめてくる。そうすると掛け合いもしやすくなるんです。

SNS以外でも、相手を知るためにしていたことってありますか?

ミシロ
菅原さんのオンラインサロンや懇親会にも行きましたね。菅原さんがどういう空気感で人と話してるのかを知っておくと、“その人らしさ”が分かるんですよ。それが分かると、動画の中でも無理せずやりとりできるようになる気がします。

相手を理解しようとすることが、掛け合いの下地になる。

ミシロ
そうですね。仲良くなることが目的ではなく、「この人はこういうことが好きで、こういう時にスイッチが入るな」とか、「これはあんまり触れない方が良いかもな」とか。そういうことがある程度分かってると、お互い変な緊張なく話せると思うんです。

撮影を始める前にしていること

撮影は、やはり本番が勝負という感じなんでしょうか?

ミシロ
いや、むしろカメラを回す前の方が大事だなって思っています。先ほどお話したように、撮影前に、ちょっとした雑談をする時間を意識してとってます。だいたい5分くらい。雑談なく、「さあ始めます!」って撮影を始めてしまうと、空気が固いままスタートしちゃうんですよね。だから、撮影前に雑談をするようにしています。

雑談の内容も、事前に準備しているんですか?

ミシロ
演者の方のX(旧Twitter)とかブログを軽くチェックしておきますね。「ああ、最近こういうことあったんだな」「こういうことに興味があるんだな」っていう情報を頭に入れておくだけで、話のきっかけになるので。たとえば「この前◯◯って投稿してましたよね?」って言うと、「そうそう」って向こうも返しやすくなる。

本題に入る前の助走みたいなものですね。

ミシロ
そうですね。盛り上げようとかじゃなくて、演者との空気感を合わせるための時間です。本番に向けて、話すモードに自然と入れるようにするイメージです。

言われてみると、話し始めがぎこちない動画って多い気がします。

ミシロ
そうなんですよ。雑談なしで事務的にカメラを回してしまうと、硬くなるんですよね。表情も声も。だから、撮影する前に空気をほぐすために雑談をしておくと、そのあとの撮影の空気感が違いますよ。

動画の話し始めが自然になる、と。

ミシロ
そうそう。演者との掛け合いのためのチューニングって感じですかね。撮影に入る前に軽く雑談をすることで、自然な空気感になっていくと思います。

台本をやめた理由とは?

最初のころは、台本を用意して収録していたと聞きました。

ミシロ
そうですね。始めたばかりのときは、しっかり台本を用意して撮ってたんです。でも、それでやってみたら全然うまくいかなかったんですよ。

どういうところが難しかったんですか?

ミシロ
台本があると、どうしてもそれに気を取られてしまって、自然な会話ができなくなるんです。「次はこれを聞かなきゃ」って意識が強くなりすぎて、棒読みになる。結果、会話のリズムも崩れるし、相手の話にちゃんとリアクションできなくなるんですよね。

たしかに、台本があると安心感はあるけど、自由さは失われそうです。

ミシロ
そうなんです。話を聞いてるというより、「次に何を言うんだっけ」って頭の中で確認してる状態になる。そうするとリアクションも浅くなるし、自然な掛け合いができなくなるんですよ。菅原さんの言葉に、その場でちゃんと反応することが難しかったです。

そうだったんですね。それでは今はもう完全に台本なしですか?

ミシロ
はい。今は「このテーマで話そう」っていうのと構成をおおまかに決めて、それ以上は作り込まないようにしています。その方が自然に菅原さんの言葉に反応できるし、掛け合いとしても自然になるんですよね。

逆に、それでうまく回るようになった?

ミシロ
はい、明らかに良くなりました。話が詰まっても、詰まったなりの面白さが出たり、それを受けてリアクションが出せるようにもなる。編集でカットもできますしね。噛んでもいいって思えるようになったので、構えずに撮影に臨めるようになりました。

「不完全さを許せるようになった」んですね。

ミシロ
そうですね。「完成度より流れ」。きれいな言い回しより、視聴者さんに「ちゃんと伝わったか」の方が大事だと思ってます。

「不完全さを許せるようになった」んですね。

ミシロ
そうですね。「完成度より流れ」。きれいな言い回しより、視聴者さんに「ちゃんと伝わったか」の方が大事だと思ってます。

編集があるから、気負わずにいられる

編集があるからこそ、自然体で話せるという感じでしょうか。

ミシロ
まさにそうです。編集って、見栄えを整えるだけじゃなくて、収録現場の空気にも関係してると思いますね。気負わずに撮影できる環境は大切だと思います。

失敗しても編集で後からなんとでもできるので、割り切って撮影しています。だから、現場ではそこまで緊張せずにしゃべれてるんですよね。「編集でどうにかなる」って思ってるから、ちょっと噛んでも、「すいません、もう一回言い直していいですか?」って気軽に言える。
撮影は一発勝負ではなく、「完璧じゃなくていい」っていう空気があるだけで、話しやすくなるんです。たとえば僕が変に気を張って「次、これ聞かなきゃ」って思いながらガチガチにやってると、相手にもその空気感って伝わってしまいますよね。
それに、うまくやろうとは思ってないです。むしろ「噛んでも詰まっても、あとで整えられるし」っていう気持ちの余裕があるから、ちゃんと相手の話も聞けるし、必要なときに拾える。

収録が終わったあとって、自分の掛け合いとか見返したりするんですか?

ミシロ
いや、実は積極的に改善のために動画を見返すことはしないです。正直に言って恥ずかしいですし(笑)でも結局、編集チェックで動画を見ることになるんですよね、自分の掛け合いを。

見返すつもりじゃなかったけど、結果見ることになる。

ミシロ
そうです。それで動画をチェックしていると「あ、早口だったな、聞き取りにくいな」とか、「今の返しはちょっとタイミングずれたな」って、改善した方がよい事に気づく。改善した方が良いことを把握して、次の撮影のときに反映する、という流れです。無理に完璧を目指すんじゃなくて、気になったところをひとつずつ修正していく、というスタンスです。

「視聴者代表」として立つということ

YouTubeの中で、ご自身の立ち位置はどう捉えてますか?

ミシロ
僕は専門家ではないので、視聴者代表という意識です。難しい話が出てきたときに、「それどういうことですか?」って聞くことが役割かなと思ってます。

あえて素人っぽさを出しているわけですか?

ミシロ
出してるっていうより、もともとそうなんです(笑)
専門性が高い話って、聞いてると「その単語の意味って何だっけ?」ってなることがありますよね。だから、わからないことは素直に「それってどういう意味ですか?」って聞くようにしています。
プロの話は、聞き手も「分かってる前提」で進めてしまうと、視聴者が置いてけぼりになってしまうんです。だから、難しい内容だったり、単語が出てきたと思ったら、その場で素直に質問をすることが自分の役割だと思ってます。

視聴者が口に出せないところを、代わりに言ってあげる感じですね。

ミシロ
そうですね。分かってないくらいの方が良いと思っています。

台本なしの掛け合いだからこそ、自然に出る疑問なんですね。

ミシロ
そうですね。作りこまず、自然体でいることが大切です。それが結果的に視聴者も一緒に理解できるようになるのかなと。

立ち止まって聞く“間”って、大事なんですね。

ミシロ
地味なんですけど、すごく大事だと思います。
質問を挟むことで、話の流れが整理されたり、話し手自身の頭の中も整理されたりする。実際、菅原さんもちゃんと丁寧に説明してくださいますし、それが視聴者にも伝わるんだと思います。

頭の中で「今どこまで話が進んだか」を整理しながら聞いてるんですか?

ミシロ
うーん、整理というか、自然体です(笑)。だから、たまに「え、どういうこと?」って素で聞いちゃうんですよ。でもそれが結果的に動画コンテンツにとって、良かったりする。スガワラさんも感じ取ってくださって、説明してくださいますし、視聴者の理解だけじゃなくて、話し手の整理にもつながっていると思います。
それからもうひとつ意識してるのは、カメラの前では菅原さんを「クライアント」ではなく、「対等な相手」として接することです。クライアントって意識しすぎると、こっちも緊張しちゃって、掛け合いがぎこちなくなるので。撮影中はあくまで対等な関係で、自然なやりとりができるようにしています。

視聴者の目線を意識するように、カメラを見るということ

撮影中、意識的にしていることはありますか?

ミシロ
掛け合い中は、なるべくカメラを見るようにしています。やっぱり会話していると、つい相手の顔を見てしまうんですよね。特に菅原さんみたいに話が面白いと、つい1対1の会話になりがちです。でも実際には、視聴者がいることを忘れちゃいけない。撮影現場には、もう一人、つまり視聴者がいるつもりで話すようにしています。視聴者も参加しているような雰囲気になっているか、そして視聴者からみて違和感がないかが大切です。
僕も最初は全然意識してなかったのですが、編集された動画見て「掛け合いの時に菅原さんの目線がカメラ外に向く時があるな」って気づいてから、菅原さんの目線がカメラにくるように、カメラを見るようになったっていう感じです。

そういう小さな意識が、動画のクオリティに効いてくるんですね。

ミシロ
いやほんとに、ちょっとしたことでしかないんですけどね。でも、「視聴者がそこにいる」っていう意識は、ずっと持つようにしています。

収録中って、時間も意識されていますか?

ミシロ
はい、カメラに表示される時間を見ながら進めています。
「今どれくらい話してるかな?」って、だいたいリアルタイムでチェックしますね。

けっこう細かく確認してるんですね。

ミシロ
そうですね。収録はだいたい15分を目安にしています。
それくらいだと視聴者にとっても見やすいし、編集の負担も減る。
尺が長くなりすぎると、テンポがダレたり、見てる側もしんどくなったりしますから。

撮れ高と編集のバランスを考えながら、進めてるんですね。

ミシロ
そうですね。実際は「撮れ高いけたかな?」って判断ミスることもありますけど(笑)、 尺の確認をしながら、「今、話がどこまで来てるか」は常に気にしています。

前編はここまで。後編に続きます。

一覧へ戻る