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STAGEON式“一流”のマーケティング思考術「仮説思考」

運営企画室 チーフ
名和田 翔
YouTube運営事業部 運営企画室 チーフ。フリーランスの動画編集者を経て、2022 年 7 月に STAGEON にジョイン。鋭い洞察力を武器にYouTubeチャンネル立ち上げやコンセプト設計を担当し、登録者数 10 万人を突破するチャンネルを複数生み出している。
仮説思考なしにマーケティングに向き合うのは、地図を見ずに旅をするようなものだ。
迷うことなく進んでいくために。より速く、より遠くへ。名和田翔が見出した、仮説思考を習慣化する方法とは。
仮説思考
仮説思考には2種類あると考えています。1つは、「自分だったらどう考えるんだろう」という思考です。たとえば、YouTubeで視聴者さんに刺さる企画を出したいなら、「自分だったら何が刺さるんだろう」をベースに考えます。
もう1つは、視聴者さんの気持ちを自分の中におろす思考です。「憑依させる」というのが近いかもしれません。視聴者さんが興味を持つテーマについて深掘りしていくと、「それに興味があるなら、これにも興味があるのでは」という気づきがどんどん生まれていきます。
もちろんマーケティングにおいて数字は大切です。「数字がこうだからこうかもしれない」という仮説を立てて調べることもあるでしょう。
しかし、私は「人」に対する好奇心を探求していくのが仮説思考の定義だと考えています。数字を活かすのはその後です。仮説を当てはめて、数字を見ながら「これは伸びる」「これは伸びない」と振り分けていくイメージですね。
「仮説は自分自身の興味から生まれる。人は興味がないと行動できない」
私は、マーケティングを「利益につながるまでの流れ」だと考えています。
YouTubeなら、サムネイルで目を引いて入ってもらい、動画を見てもらって、そこから概要欄に進んで行動を起こしてもらえるように、目的に応じて視聴者さんをナーチャリングしていきます。
「流れ」である以上、1+1=2のような正解は決まっていません。時代も含めた市場環境はもちろん、視聴者さんの気持ちや興味を惹かれる内容もどんどん変わっていくので、状況に応じて「視聴者さんはこう思っているのではないか」という仮説を立てる必要があります。
市場調査をしなければ、ヒントを得られず前に進んでいけなかったり、効率が悪くなったりしますし、主観的な考えだけでプロジェクトを進めると失敗する可能性がありますから。
マーケティングにおいて数字は重要ですが、数字だけだと「点」止まりになってしまって、本質を理解できず、応用がきかなくなってしまいます。「視聴者さんの気持ち」のように、数値化できないものにこそ、「こうかもしれない」という仮説思考が必要なんです。
マーケティングは、時代とともにどんどん変わっていくので、絶対的な答えはありません。だからこそYouTubeという驚くほどスピード感のある市場において効率的に成果を出していくには、「流れ」に応じた仮説を立てて、検証をしていく必要があります。
仮説思考は、YouTubeに限らずマーケティング全般に使える考え方です。仮説って、自分の興味だと思うんですよ。
人は興味がないものを真剣に見ませんし、行動も起こせません。何かに対して興味を持つからこそ熱意を持って行動でき、早く結果が出るのだと思います。つまり、「興味」は目的地に到達するための推進力なんです。
YouTube以外でも、何らかの形でマーケティングに携わる方には、仮説思考は非常に役立つと思います。昨今、世の中に情報があふれすぎていて、もし仮説思考がなかったら、何から手を付けたらいいかわからなくなるでしょう。しかし、仮説思考を使って優先順位をつけていくことで、何をやったらいいのかわかるだけでなく、迷うことなく目的地に進んでいくことができます。

CASE STUDY 「伸びない!」
YouTube運営で「伸びない」という課題に直面したとき、様子見で放置するのは厳禁です。「ここがよくないのかもしれない」と仮説を立てて検証をしていかない限り、原因は特定できませんし、伸び悩みを改善できません。
たとえば、視聴維持率が高いのに登録者数が増えていないケース。視聴者さん1人あたりの平均視聴時間は長いのに登録者が増えないなら、「既存のファンは見てくれているものの、新規の人に刺さる要素がないのかもしれない」と考えられます。
すると、「こういう要素を採り入れないといけないのかも」と仮説を立てられます。その要素を採り入れた動画を出してみて登録者数が増えたらその仮説は当たりですし、増えなかったら、また別の仮説を立てて検証していけばいいだけです。仮説を立てないことには何を検証したらよいかすらわかりませんが、仮説を立てれば、次に何をすべきか判断できるようになります。
「コンセプト、どうする?」
YouTubeは「出してみないとわからない」部分はありますが、コンセプト設計の段階でも、より正解に近づけていくための仮説は立てられます。
制作でいうなら、「このサムネイルは当たるのか、当たらないのか」というように、出す前の仮説の精度をできる限り高め、より打率を上げていくためのアプローチですね。具体的には、市場調査をした上で、ある程度選択肢を絞り込み、複数案を出して周囲に聞いてみる、といったやり方をします。「AとBとCの中だったらどれがいいと思う?」と周囲に聞いてみて、「平均的に評価がよかったものなら打率も高いであろう」と仮説を立てます。
そうすると、「とりあえず設計してみる/出してみる」のに比べ、最初から当たりに近づけます。とはいえ、もともとの選択肢が多いので、AもBもCもハズレという可能性もゼロではありません。リスクヘッジとして、全部が不正解だった場合に立ち戻れる分岐点を考えておくことも必要です。
POINT
- 伸びない原因を特定するために仮説を立てる
- 仮説が当たらなかったら、別の仮説を立てて検証する
- やみくもに行動するより、仮説思考を使って打率を上げる
TRAINING自分ごとで考える
仮説思考を鍛えるのに効果的なトレーニングは、日常的に「自分だったらどうだろう」と考えるクセをつけることです。たとえば、テレビでアナウンサーが話しているのを見たら、「もし自分がアナウンサーだったらどう話すんだろう」と考えます。
目の前の人と話すときは、「もし自分が一流のコンサルタントだったらどう話すんだろう」と考えて、その通りにやってみるんです。相手の反応を見れば、本物とのギャップがわかり、自分の仮説が正しかったかどうかの検証もできます。YouTube運営に当てはめると、視聴者さんを自分の中におろして(憑依させて)、個人的なものの見方や感覚は脇に置き、「もし視聴者さんだったらどう感じるか」を観察します。視聴者さん以外に、伸びているYouTuberをおろしてくるのも効果的です。
おろしてくると、「こうかもしれない」という仮説が必ず生まれます。それが正解かどうかは問題ではなく、気づきを得ることが肝心です。
最悪のケースを想定
行動を起こす前に「もしこれがダメだった場合」を想定して対策を考えておくのも、仮説思考を鍛えるのに役立ちます。最悪の場合を考えることは、仮説のきっかけになるのはもちろん、自己防衛にもつながります。
たとえば、私にとっての“最悪のケース”とは「講師として登壇しているときに頭が真っ白になって言葉が出てこない」というものです。そのときは「スライドに書いてある文字を読み上げて『これについて説明しますね』と言おう」と決めています。事前にそう決めておくことで、落ち着いて話せるんです。
日常生活でも、最悪のケースを想定するトレーニングはできます。休日に友人と遊ぶとして、事前に「目当てのお店に行けなかった場合」を想定し、そのときにどのような行動を取ればスムーズにいくだろうと考えるのです。
不思議なことに、人間は一度自分の考えに自信を持つと、それから離れられなくなります。しかし、最悪のケースを想定して仮説を立てておくと、うまくいかなかったときに理性的にストップをかけて、次の対策を選んでいけます。