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2025年、YouTubeチャンネルをどう伸ばす?最新トレンド解説と成功のヒント

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取締役副社長

箱﨑 蓮

兵庫県芦屋市生まれ。2020 年 6 月 STAGEON 創業期に立ち上げメンバーとして参画。YouTube コンテンツ撮影補助や現場 AD として業務をスタートし、動画の企画や編集に携わる。YouTube 黎明期から自身でチャンネル運営をしていた経験と動画コンテンツへの深い愛と知見を武器に、運営代行を手がけたチャンネルでは 2 ヶ月半で 1000 万回再生を超える動画を制作し、YouTube の急上昇1位を記録。 STAGEON 内のプロデューサーで No.1 になる。2023 年 7 月より STAGEONの取締役副社長に就任、チャンネル運営事業部のトップとして YouTube 運営のプロを育成するスクール「KURIKOU」では、後進の指導にも当たる。運営に携わるチャンネルのコンテンツ内では「コロ助」として動画にも出演している。

市場の動向、視聴者のニーズ、トレンド。
さまざまな観点で捉えるYouTubeマーケティングの「今」。
そこから2025年の成功のヒントを紐解く。

YouTubeマーケティングにおいて、2024年はどのような変化がありましたか?

箱﨑
大きな変化として挙げられるのは、YouTubeに投稿される動画の制作クオリティが一段と上がったことです。しっかりシナリオが作られたショートドラマや、MCとゲストを迎えたスタジオ収録動画など、YouTubeの中でもまるでテレビのような番組が見られるようになりつつあります。今はエンターテイメントとしてYouTuberが公開しているケースが多いですが、このトレンドは間もなく法人YouTubeマーケティングにも浸透してくるでしょう。法人が運営するYouTubeチャンネルでも、少しずつ事例が増えています。

たとえばどのようなものがありますか?

箱﨑
最近ですと、芸人をMCとして起用したトーク番組を投稿し、再生回数を伸ばしているチャンネルがありました。スタジオ収録してシリーズ化して投稿しているので、まさにテレビ番組のような印象を受けます。

そういう番組を作るとなると、コストもかかりそうですね。

箱﨑
クリエイティブにかける価格が高騰している一方、動画市場は全体として成熟しつつあります。制作会社が増え、価格競争が激化する中で、安価を武器にする制作会社も少なくありません。数年前まで動画編集は専門技術であり、対応できる人材は限られていました。しかし現在は動画編集者が増え、技術提供の価値は低くなりつつあります。そのため、一言で「動画制作のコストは高くなった」とは言えません。いくらでも予算をかけることができる一方、工夫次第で安く作ることもできます。

テレビ番組風の番組を作るうえでの注意点はありますか?

箱﨑
芸人やタレント、インフルエンサーをキャスティングする場合、彼らには多数の固定ファンがいるため、出演動画の再生回数を増やすことができるでしょう。しかし、それだけではYouTubeチャンネル自体のファンが増えたことにはなりません。企画が終われば、また再生回数は落ちてしまいます。そのため、キャストを迎えて番組を作るのであれば、なんらかの企画を打って企業自体に興味・関心を持ってもらう機会を作らなければなりません。また、固定ファンと自社のターゲット層の相性なども考える必要があります。ショートドラマを作るうえでも同様の注意が必要です。ショートドラマで人気を集めているYouTubeチャンネルを分析してみると、役者のファンが多いタイプと、シナリオが面白いことにファンがついているタイプに二分されます。前者のチャンネルがライブ配信をすると、役者が話している姿が見たいファンが多いため、後者のチャンネルよりも再生回数が伸びます。同じショートドラマというジャンルでも、ファンがついている対象が異なると、効果的なマーケティング手法も変わってくるということです。この「何のファンになってもらうか」という観点は、重要なポイントです。

「リアル」をクオリティ高く届けることが重要
新たに注目すべき手法は「ライブ配信」

動画の制作サイドで起こっている変化についてお聞かせください。

箱﨑
市場ニーズの変化を踏まえ、主戦場をYouTubeに移行するクリエイターが増えつつあります。たとえば、Webサイトのバナー広告制作はデザイン領域の業務のひとつでした。以前は広告枠のサイズに合わせて、何パターンも制作する必要があったからです。しかし、一つのデザインからサイズを自由に変えられる機能や、AIによる自動生成技術が浸透してから、デザイナーに対するバナー広告制作のニーズは減少しました。この流れを見て、逆にニーズが増えているYouTubeのサムネイルデザインの領域を開拓するデザイナーが増えたのです。これはあくまで一例ですが、YouTube以外でスキルを積んだ人材が、YouTubeのクリエイティブに参入しつつあることが、制作クオリティ向上の背景にあります。YouTubeにおける動画のクオリティは、マーケティングの知識とデザインスキル双方が必要ですが、近年はいずれにも磨きがかかっていると思います。

視聴者のニーズの変化についてもお聞かせください。

箱﨑
YouTubeがここまで人気を集めてきた理由のひとつは、テレビでは見られない要素が見られることでした。テレビ制作会社、つまり番組制作のプロが作ったコンテンツはフィクションであることがほとんどで、見方を変えれば「つくりもの」とも言えます。そういったコンテンツを多く見るうちに、視聴者は「リアル」なものに惹かれるようになったのかもしれません。黎明期のYouTubeは、ユーザーが自由に投稿する動画を通じて、そういった「リアル」を見られる場としての役割を果たしていました。しかしプラットフォームとして成熟してくるにつれて、YouTubeでも表現に対する規制が強くなりつつあります。また、先ほどお話したように、より洗練された番組が増えていく傾向もあります。こうしてテレビ番組に近しい動画が今後YouTubeに増えてくると、今度はまた、より「リアル」な情報を得られる、別の新進プラットフォームが台頭してくるのかもしれません。こうした流れを踏まえつつ、改めてお伝えしておきたいことは、視聴者は意図的な「嘘」を嫌うということです。猫や赤ちゃんといった対象は、どのSNSでも高く評価されやすいですよね。彼らは嘘がなく本能的な存在だからこそ、誰からも受け入れられやすいのだと思います。私たちが支援するYouTubeチャンネルでも、ドキュメンタリー形式の動画が大きな反響を呼び、成功につながったケースがありました。脚色されていない本音の会話を見せたことが、視聴者のニーズに合致したのでしょう。

形はどうあれ、「リアル」を見せることが大切なんですね。

箱﨑
はい。私はこれまでの記事で「情報的価値」と「情緒的価値」を効果的に提供していくことの大切さを説いてきましたが、今後のYouTubeマーケティングにおいては、後者の情緒的価値の重要度がさらに高まっていくと思います。クオリティの高い動画を作ることはもちろん大切なのですが、それを意識するあまり、情報的価値だけに偏った動画になってしまうと、視聴者の心には響きません。演者の人柄や本音を嘘偽りなく見せることで引き出される情緒的価値が、視聴者のファン化につながることを忘れないようにしましょう。

2025年、注目すべきトレンドワードはありますか?

箱﨑
私が注目しているのは、「ライブ配信」です。先ほどお話した情緒的価値を届ける手法として、ライブ配信はとても効果的だと思います。ライブ配信には、視聴者とコミュニケーションを交わせるコメント機能があるからです。リアルタイムでやりとりすることで、演者と視聴者の関係性は深まり、YouTubeチャンネル全体のファン化が促進されます。また、通常の動画においては、これまでのトレンドの逆張りをするのが基本戦略になります。2024年は「完全版」をはじめとしたいくつかの特徴的なトレンドがありましたが、2025年はその揺り戻しが生じるはずです。あえてひと昔前のトレンドを再び取り上げてみたり、普遍的なテーマの重要性に注目してみたりと、原点に立ち返るような傾向が増してくるかもしれません。

ライブ配信と通常の動画で、演者が求められるスキルは変わりますか?

箱﨑
箱﨑基本的には変わりません。ただ、通常の動画であれば編集できるのですが、ライブ配信は未編集の情報がリアルタイムで視聴者に伝わるので、トークスキルはライブ配信のほうが試されます。編集された動画と同じくらいわかりやすくスムーズなトークができていれば、視聴者から好感を持ってもらいやすいと思います。

では、演者の皆さんにとっては「トークスキル向上」が今年の目標になりそうですね。

箱﨑
そうですね。少し話がそれますが、トークスキルは演者としてだけでなく、ビジネスのあらゆるシーンで活きる技術ですよね。経営者が事業について何か質問されたとき、すぐにわかりやすく答えられることは顧客の信頼感につながるでしょう。また、セールストークはもちろん、社内でマネジメントをするときも、誰かに何かをわかりやすく伝える力は求められます。ライブ配信で求められる技術としてトークスキルを挙げましたが、そこに注力することはビジネスに携わる人であれば、誰にとってもプラスになると思います。

STAGEONとして、トークスキル向上のために何かアプローチしていますか?

箱﨑
よりトークスキルを高めたい、動画出演に不安があるといった演者の皆さんに対して、活動開始前に演者としてのふるまいについてトレーニングを行う期間を設けることもあります。トークスキルをテーマにしたトレーニングは、希望があれば実施する形にしていますので、不安がある方は気軽に担当者までご相談ください。

どんなライブ配信を行えば、成果につながりますか?

箱﨑
ライブ配信の理想的な在り方は、ラジオ番組に近いのではないかと思います。ラジオ番組では、リスナーがおたよりを送って、リアルタイムでそれを読みますよね。テレビよりも視聴者数は少ないかもしれませんが、集まっているのはコアなファンです。ラジオパーソナリティの声に耳を傾け、地域や時間帯などによって絞られたリスナー同士がゆるやかにつながるラジオ番組は、情緒的な価値が高いメディアだと考えられます。これと同じように、ライブ配信はコアなファンをつくるのに適した手段です。しかも、声だけでなく映像も届けることができて、メールよりも瞬発的なチャットでやりとりもできます。この強みを理解したうえで、視聴者とのコミュニケーションを設計することができれば、ファンを一気に増やすこともできるはずです。

そのほか、2025年に取り組んだほうがいいことはありますか?

箱﨑
ライブ配信の延長線上にある話ですが、選択肢を狭めることなく、あらゆるSNSを通じてエンゲージメントを獲得していきましょう。もともとクライアントの皆さんには、YouTubeだけでなく他のSNSにも取り組むことを推奨していますが、今後その重要度はさらに高まっていくと思います。最近「新世代YouTuber」と呼ばれるインフルエンサーが存在感を増していますが、彼らはInstagramのライブ配信で視聴者と交流し、そこで獲得したファンを基盤としてYouTubeまで活動範囲を広げてきました。これと同じように、ビジネス系のインフルエンサーや法人YouTubeチャンネルも、InstagramやTikTok など自社に合ったプラットフォームを活用すれば、YouTubeでは獲得できなかった視聴者を新たにファン化することができるかもしれません。ライブ配信ひとつ取っても、YouTubeにこだわる必要はありません。自社が狙うファン層によっては、Instagramのほうが情緒的価値を伝えるのに適していることもあります。

YouTube以外で法人に向いているプラットフォームはありますか?

箱﨑
ポッドキャストやラジオ風の番組が配信できる、音声プラットフォームがおすすめです。そのひとつであるVoicyは、配信者を媒体が選ぶ審査制を採用していて、誰でも配信できるプラットフォームよりも信頼性が高く、法人や経営者の利用に向いていると思います。音声プラットフォームは、ある程度視聴者層が絞られる利点があります。動画よりも伝わる情報量が少なく拡散力が低いからこそ、不本意な誤解を生んだり、悪意のある形で引用されたりする心配が動画に比べて少ないのが魅力です。こうした音声プラットフォームと他のSNSを効果的に連携させれば、適切な形で認知を獲得していくこともできると思います。

幅広くSNSを活用し、連携させたほうがいいということですね。

箱﨑
複数のSNSを俯瞰し、連携させながらマーケティング戦略を立てていくのがベストです。私たちもそういった包括的なコンテンツマーケティングには積極的に取り組んでいきたいと考えており、社内の運営企画室は、まさにそういった新規事業の可能性を模索するべく設けられた部門です。現状としてはクライアントのマーケティング施策を支援する他社と連携し、全体の戦略を踏まえながらYouTubeチャンネルのゴールを考えていますが、今後はSTAGEONが全体の支援に携われるような体制を整えていきたいです。

そうした戦略のもと、ビジネスの成果につなげる上でのポイントはありますか?

箱﨑
演者である経営者に惹かれるファンを獲得し、既存の商品やサービスへと誘導していくのが基本的なYouTubeマーケティングの考え方ですが、今後はファンが定着した領域に合わせて新しい商品・サービスを作る考え方も取り入れていくといいかもしれません。たとえば、ショートドラマを中心に人気を集めるYouTubeチャンネルでは、シナリオ制作やキャスト派遣の事業を展開しています。ここで注目したいのは、各チャンネルのファンが何を求めているかに合わせて商品を開発していることです。シナリオの面白さが魅力のチャンネルではシナリオ制作が商品になり、キャスト群が人気を集めているチャンネルではキャスト派遣が商品になる。その違いを理解したうえで、自社のチャンネルのファンが何に対して惹かれているのか分析すれば、成功確度の高い新規サービスを開発できるはずです。

最後に、2025年の傾向を踏まえ、YouTubeマーケティングに挑む企業の方々にメッセージをお願いします。

箱﨑
視聴者がコンテンツに求めているのは、「リアル」であることです。そして彼らはどんな情報であるかより、誰から情報を受け取るかを重視しています。多くの人々から「この人から情報を受け取りたい」と思われる人を目指して、ご自身の人柄やキャラクターをしっかり打ち出していきましょう。そのための手段のひとつとして、今回お話したトークスキルの向上は重要です。自分自身の強みや伝えたいことを考え抜き、磨いてくだされば、あとはSTAGEONがそれをどう見せるか、戦略を立てて導いていきます。クライアントの皆さんと二人三脚でYouTubeチャンネルを育てていきたいと思いますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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