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概要
「数より質」が経営者の心を掴む、そのYouTube戦略とは?「黒字社長の絶対つぶれない経営学」インタビュー
市ノ澤翔|プロフィール
1982年生まれ。公認会計士。大学進学せずアルバイト生活を送る中、1年で公認会計士試験に合格。あらた監査法人(PwC Japan)にて一流企業の監査に従事後、独立。紹介のみで顧問依頼が殺到する税理士として活動。YouTubeチャンネル登録者数は約5万人を超える。中小企業の財務改善に貢献。
著書「『頭がいい社長は“会社のお金”のココしか見ない 90日で手残りを増やす「武器としての簿記」』が2025年1月に発売後、4版が決定している。
本質を突く「深掘り」でロイヤリティを高める 濃いファンを生み出す情報発信

Q1
YouTubeを始められたきっかけについて教えていただけますか?
- 市ノ澤 翔氏(以下、市ノ澤)
- 本当に最初は、SNS戦略の一環として「とりあえずやってみよう」という軽い気持ちでしたね。明確な目的があったわけではなく、XやInstagramと同じような位置づけ。当時は今とは別のチャンネルで、経営の話も少しはしていましたが、不動産投資の話…例えば「ボロ戸建てを買ってみた」なんていう、雑多な内容を発信していました。
Q2
ボロ戸建て! かなりインパクトがありますね(笑)。当時はご自身で企画から運用までされていたのですか?
- 市ノ澤
- そうです。企画も全部自分で考えて、リサーチも一応はしていましたが、今振り返ると浅かったかもしれません。とにかく手探りで、再生数を意識するあまり、どうしても内容が浅くなりがちな側面もありました。もちろん、それはそれで一定の反応はありましたが、本業である経営者向けのセミナーなど、直接的なビジネスへの繋がりという点では、物足りなさを感じていたのも事実です。
Q3
そこから、現在の「黒字社長の絶対つぶれない経営学」チャンネルのように、経営者に特化した内容へと大きく方向転換されたわけですね。その背景には何があったのでしょうか?
- 市ノ澤
- 大きなきっかけは、ある経営者の方と話す中で得た「気づき」です。YouTubeの世界を見渡すと、例えばフォロワーが100万人いるような巨大チャンネルよりも、たとえ5万人でも特定の層に深く刺さっているチャンネルの方が、ビジネスとして遥かに大きな成果を上げているケースがたくさんある、と。その話を聞いて、ハッとしたんです。「ああ、僕は有名人になりたいわけじゃない。ビジネスを伸ばしたいんだ」と。

Q4
フォロワー数という分かりやすい指標に惑わされがちですが、ビジネスゴールから見ると、必ずしもそれが最重要ではない、と。
- 市ノ澤
- まさにその通りです。それまでは、フォロワー数を増やすことがビジネスに繋がるると、どこかで思い込んでいたんですね。でも、冷静に考えれば、我々のビジネスのターゲットは明確に「経営者」です。極端な話、経営者ではない方が100万人集まってくれても、ビジネスには直接結びつかない。むしろ、浅い情報ばかりを求めている層が増えることで、本当に届けたいメッセージが薄まってしまう可能性すらある。そこで、「数」を追うのをやめ、「質」、つまり我々が本当に価値を提供できる「経営者、それも本気で会社を良くしたいと考えている層」にターゲットを絞り込む戦略へと、大きく舵を切ることを決意しました。有名になったって、いいことなんか何もないですからね。
Q5
「視聴者の質」を重視するというのは、具体的にどのような戦略なのでしょうか? STAGEONさんとしては、どのように市ノ澤様のその決意を形にしていったのですか?
- STAGEON 飯田
- まず、市ノ澤さんのビジネスゴールである「売上向上」に貢献するために、最も価値を提供できる視聴者層は誰なのか、という点を徹底的に掘り下げました。その結果、ターゲットを「年商規模の高い経営者」に設定し、その層が抱えるであろう深い悩みに、ピンポイントで応えるコンテンツを提供していく、という方針を固めました。
Q6
ターゲットの解像度を上げるために、どのようなことをされたのですか?
- STAGEON 飯田
- チーム内でのブレストはもちろんですが、私自身が経営者ではないため、経営者の方々のリアルな悩みや感覚を理解することが非常に重要でした。市ノ澤さんから直接、顧問先の経営者の悩みを伺ったり、私自身も経営者が集まる勉強会やコミュニティに積極的に参加して、彼らが今何に困っていて、どんな情報を求めているのか、生の声を聞くように努めましたね。そういった地道な情報収集が、ターゲット理解の解像度を高める上で非常に役立ちました。
- 市ノ澤
- STAGEONは、そうやって得たリアルな情報や、様々なデータを基に企画を提案してくれる。自分の感覚だけで「これがウケるはず」と考えるのではなく、データとリサーチに基づいた戦略だからこそ、自信を持って「質」を追求できる体制ができたと感じています。
Q7
ターゲットを明確にした上で、コンテンツ内容については、どのような点を意識されていますか?
- STAGEON 飯田
- やはり、ターゲットである「年商規模の高い経営者」が最も関心を持つであろう「財務」の分野ですね。特に、「どうすれば会社に利益、キャッシュを残せるのか」という、経営の根幹に関わるテーマを深く掘り下げることを意識しています。こうした専門性の高い内容は、視聴維持率が高く、視聴者からの反応も非常に良いんです。結果的に、セミナーへの申し込みや、LINEを通じた見込み客獲得にも繋がりやすい傾向がありますね。最近では、以前は反応が鈍かったような、より専門的で難しい内容、例えば財務分析や決算書の細かい勘定科目に関する話などでも、しっかりと反応が得られるようになってきました。
Q8
具体的に、特に反響の大きかった企画テーマはありますか?
- STAGEON 飯田
- やはり「節税」に関するテーマは鉄板ですね。多くの税理士系YouTuberが「節税テクニック」を発信する中で、市ノ澤さんは逆に「過度な節税はむしろ危険。しっかり利益を出して納税し、内部留保を厚くすることこそが会社を強くする」という、ある意味“逆張り”のメッセージを発信したことで、これまでとは違う反響を得ることができました。
- 市ノ澤
- 逆張りというか、これが経営の本質だと僕は思っていますけどね。目先の税金を減らすことばかり考えていると、結局会社にお金が残らない。体力のない会社になってしまうんです。
- STAGEON 飯田
- 「節税すると倒産する理由」といった企画は、まさにその本質を突いたもので、非常に大きな反響がありました。リピーターはもちろん、新規の視聴者にも強く響き、「今までモヤモヤしていたことが腑に落ちた」といった声が多く寄せられましたね。LINEへの流入も非常に多かったです。
- 市ノ澤
- あとは、「黒字倒産」の話も、多くの方に衝撃を与えたようです。損益計算書上は黒字なのに、キャッシュフローが回らずに倒産してしまう。これは、倒産する会社の半数近くに見られる現象ですが、意外と知られていない。こうした、学校では教えてくれない、しかし経営者にとっては死活問題となる「リアルな経営の現実」を伝えることが、このチャンネルの価値だと考えています。
Q9
世間の常識や、他のチャンネルとは一線を画す、深く本質的な情報提供が、質の高い視聴者からの信頼とロイヤリティ(忠誠心)を生んでいるわけですね。「視聴者の質」を追求する戦略に転換されてから、具体的にどのような成果が現れていますか?
- 市ノ澤
- 目に見える一番の変化は、セミナー集客ですね。YouTube経由で参加される方が大幅に増え、しかも、その方々の熱量が非常に高い。以前よりも、より真剣に経営課題に向き合っている方が集まってくれている実感があります。
- STAGEON 飯田
- データ面でも変化は明らかです。チャンネル登録者向けのLINEでアンケートを実施すると、年商10億円を超える規模の経営者からの回答が着実に増えています。これは、我々が届けたいと考えている層に、的確にコンテンツがリーチし、響いていることの”証”だととらえています。
- 市ノ澤
- 実際にお会いする視聴者の方々の層も、確実に変わりましたね。以前は様々な方がいましたが、今はほとんどが経営者。しかも、「市ノ澤さんの言う通りに経営方針を変えたら、本当にお金が残るようになった」といった、具体的な成果を報告してくださる方も多いんです。これは、発信者として何より嬉しいフィードバックですね。

Q10
再生数や登録者数といった表面的な数字だけでなく、セミナー集客への貢献や、ターゲット層からの具体的な反響といった「ビジネスの成果」に繋がっているわけですね。 質の高いコンテンツを、ほぼ毎日更新されているのは大変だと思うのですが、その継続の原動力は何なのでしょうか? モチベーション維持の秘訣があれば教えてください。
- 市ノ澤
- いや、モチベーションというのは特にないんです。もう、YouTubeをやるのは「当たり前のこと」というか、日々のルーティンの一部。モチベーションに頼っていると、それが下がった時に続かなくなってしまうでしょう? だから、「やる気があるからやる」のではなく、「やるべきことだからやる」。ただ、それだけです。
Q11
とはいえ、毎日続けるのは大変なことだと思います。それを支えているものは何でしょうか?
- 市ノ澤
- それは間違いなく、STAGEONと飯田さんの存在ですね。企画立案から撮影、編集、投稿まで、プロフェッショナルなチームが一貫してサポートしてくれる。僕は基本的に、提案された企画に対して意見を述べたり、撮影に臨んだりすることに集中できる。この「任せられる」体制があるからこそ、クオリティを維持しながら継続できているんだと思います。
- STAGEON 飯田
- 市ノ澤さんは、とにかくレスポンスが早い(笑)。我々が提案したものに対して、すぐに的確なフィードバックをくださるので、非常にスムーズに制作が進みます。この信頼関係とスピード感が、日々の更新を可能にしている大きな要因ですね。
Q12
今後、このチャンネルをどのように発展させていきたいとお考えですか?
- STAGEON 飯田
- 目指すのは、さらにターゲットを絞り込んだ「超特化型チャンネル」です。年商規模が非常に高い経営者層に特化し、彼らが求める、より高度で専門的な情報を提供していく。例えば、資格試験レベルのような難易度の高い財務・経営戦略に関するコンテンツなども展開していきたいですね。そして、最終的には、このチャンネルが市ノ澤さんのビジネスに、よりダイレクトに、そして強力に貢献できるような存在になることを目指しています。
- 市ノ澤
- チャンネルとしては、コラボレーションも積極的に行っていきたいですね。異なる分野の専門家や、同じように質の高い視聴者を持つチャンネルと組むことで、新たな価値を提供できるはずです。それこそ(税理士の)菅原さんとやったら面白いんじゃないかな、とは思いますね。
Q12
市ノ澤様ご自身の、今後のビジョンについても教えていただけますか?
- 市ノ澤
- 個人的には、今運営している経営者向けの講座を、来年、世界一の経営者が集まるようなコミュニティへと進化させます。単なる学びの場ではなく、参加者同士のビジネスが加速するような、価値ある繋がりが生まれるプラットフォームを創り上げたい。そのための準備を、今まさに進めているところです。あとは、自社ビルを建てることと、サッカーチームを作ること。これも、数年内に実現させたい大きな目標ですね。立ち上げは理想としては来年にでもやる予定です。

■YouTubeチャンネル運営成功の鍵は「誰に、何を届けたいか」の徹底追求
「黒字社長の絶対つぶれない経営学」の成功事例は、YouTubeを単なる動画プラットフォームとしてではなく、ビジネスゴール達成のための戦略的ツールとして捉えることの重要性を示しています。
- 「量より質」への転換: 登録者数という指標に囚われず、自社のビジネスにとって最も価値のある「視聴者層」は誰かを見極め、その層に深く響くコンテンツに集中投下する。
- 本質を突く専門性: 小手先のテクニックやトレンドに流されず、ターゲットが真に求める、深く専門的な情報を提供し続けることで、揺るぎない信頼とロイヤリティを構築する。
- 継続を支える仕組み: モチベーションに頼るのではなく、「習慣化」できる仕組みと、信頼できるパートナーとの連携体制を構築する。
- データに基づいた意思決定: 感覚ではなく、データに基づいた分析と戦略立案を行い、PDCAサイクルを回し続ける。